インプラント周囲炎になったらどうする?原因・治療法・予防策
インプラントは天然歯に近い見た目と機能を回復できる優れた治療法ですが、長く使い続けるためには日々の丁寧な口腔ケアが大切です。
インプラント治療後に特に注意したいのが「インプラント周囲炎」です。
インプラント周囲炎になると歯肉の腫れや出血、インプラントのぐらつきが起こり、重度になるとインプラントが抜け落ちてしまうこともあります。
一方で、早めに適切な対処を行えば、治る可能性もあるため、気になる症状が見られた場合は早めに受診 することが大切です。
この記事では、インプラント周囲炎になったときの対処法をはじめ、症状や原因、治療法、予防法について詳しく解説します。
インプラント周囲炎になったらどうする?
インプラント周囲炎を発症したとき、「少し様子を見ていれば治るかもしれない」と考えてしまう方もいるかもしれません。
しかし、インプラント周囲炎は自然に治ることはなく、早めに歯科医院を受診して適切な処置を受ける必要があります。
自然治癒することはなく治療が必要
インプラント周囲炎は、放置して自然治癒することはありません。
一度感染してしまうと、歯科医院で適切な治療を行わない限り、炎症は進み続けます。
初期の段階では痛みを感じにくいことが多く、自覚症状がないまま症状が悪化してしまうケースも少なくありません。
放置すると顎の骨(歯槽骨)が溶け出し、インプラントがぐらつき始め、最終的には撤去が必要になることもあります。
インプラントを長持ちさせるためにも、少しでも気になる症状があれば、できる限り早急に歯科医院へ相談することが大切です。
症状に合った治療を行えば治る可能性がある
インプラント周囲炎は自然治癒しないものの、早期発見・早期治療によって症状を改善できる可能性があります。
炎症がまだ歯肉にとどまっている「インプラント周囲粘膜炎」の段階であれば、プラークや歯石の除去といった非外科的な処置で改善が期待できます。
一方、炎症が歯槽骨にまで進行すると、外科的な処置が必要になるケースが多く、症状が進行するほど治療の難易度も費用の負担も大きくなります。
インプラント周囲炎の予防のためにも、歯科医院での定期メインテナンスが大切です。
インプラント周囲粘膜炎・インプラント周囲炎とは?
インプラント周囲の炎症は、進行段階によって「インプラント周囲粘膜炎」と「インプラント周囲炎」の2つに分けられます。
どちらもプラーク(歯垢)に含まれる細菌が原因で起こる感染症です。
ここからは、それぞれの状態と症状について詳しく解説します。
インプラント周囲粘膜炎の症状
インプラント周囲粘膜炎は、インプラント周囲の歯肉に炎症が起きている状態で、インプラント周囲炎の初期段階です。
この段階では骨の吸収は起きておらず、適切なケアを行えば健康な状態に戻せることが多いとされています。
インプラント周囲粘膜炎の主な症状としては、以下があります。
- 歯肉の赤みや腫れ
- 歯磨きの際の出血
インプラント周囲粘膜炎は痛みはほとんどなく、日常生活で気づきにくいケースも少なくありません。
放置するとインプラント周囲炎へと進行し、骨が溶けてしまうため、軽い症状でも見逃さず、歯科医院でのチェックを受けることが大切です。
インプラント周囲炎の症状
インプラント周囲炎は、粘膜の炎症がさらに進行し、インプラントを支える歯槽骨にまで炎症が及んだ状態です。
インプラント周囲炎では、以下のような症状が見られます。
- 歯肉から膿が出る
- 歯肉が腫れる
- インプラントの痛みや違和感
- 歯肉が痩せてインプラントの根元(インプラント体)が見え始める
- インプラントのぐらつき
- 口臭が強くなる
放置して骨の吸収が進行すると、インプラントが抜け落ちてしまうこともあります。
インプラントには天然の歯が持つ「歯根膜」という防御組織がないため、一度細菌に感染すると炎症の進行が天然歯の歯周病よりも早い傾向にあります。
インプラント周囲炎のリスクを高める原因
インプラント周囲炎は突然起こるものではなく、いくつかの要因が重なることで発症・進行のリスクが高まります。
ここでは、リスクを高める代表的な原因について解説します。
原因を理解し、予防や再発防止につなげましょう。
メインテナンス不足
インプラント周囲炎の主な原因は、プラーク(歯垢)の蓄積です。
歯磨きが不十分だったり、歯間ケアを行っていなかったりすると、インプラント周囲に細菌が増殖し、炎症を引き起こします。
天然歯と異なり、インプラントは感染に対する抵抗力が弱いため、より丁寧なケアが必要です。
歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシなども併用して、隅々まで汚れを落としましょう。
自宅でのケアだけでなく、歯科医院での定期的なメインテナンスも重要です。
プラークが長時間残ると硬い歯石へと変化し、歯石は歯科医院でのクリーニングでなければ取り除けません。
セルフケアと歯科医院での専門的なケアを続けて、インプラントを守りましょう。
喫煙
喫煙は、インプラント周囲炎のリスクを高める原因の一つです。
タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素には血管を収縮させる作用があり、歯肉への血流が悪くなります。
すると、歯肉に必要な酸素や栄養素が十分に届かなくなり、細菌に対する免疫力・抵抗力が低下してしまいます。
喫煙者の方はインプラント周囲炎のリスクが高いとされているため、インプラントを長持ちさせるためにも禁煙・減煙を検討しましょう。
歯ぎしりや食いしばり
歯ぎしりや食いしばりの習慣も、インプラント周囲炎のリスクを高める要因です。
インプラントに強い力が繰り返しかかると、インプラント周囲の組織に慢性的な負担が生じ、炎症が起こりやすい環境になります。
また、歯ぎしりや食いしばりは通常の噛む力よりも強く、インプラントを破損させる原因にもなるため、注意が必要です。
歯ぎしりや食いしばりは就寝中など無意識に行われることも多く、気づかないうちにインプラントへ過剰な力が加わり続けるケースが少なくありません。
歯ぎしりや食いしばりがある場合には、就寝時にマウスピース(ナイトガード)を装着するなどの対策が有効です。
持病の影響
糖尿病や骨粗しょう症などの疾患も、インプラント周囲炎の発症リスクを高める要因として知られています。
糖尿病の方は、血糖値のコントロールが不十分な状態が続くと免疫力が低下し、歯周病菌をはじめとする細菌への抵抗力が弱まります。
そのため、炎症が起こりやすく、一度発症すると進行しやすい傾向があります。
骨粗しょう症の方の場合、骨が脆いため、インプラント周囲炎になると骨が減少しやすく、重症化してしまうリスクがあります。
持病をお持ちの方は、内科の主治医と歯科医師が連携しながら治療を進めることが大切です。
医師の知識や技術力
不適切な埋入ポジションや不適切な上部構造の設計も、インプラント周囲炎のリスクを高めることにつながります。
インプラント周囲炎を防ぐためには、治療を受ける歯科医院選びが重要です。
治療を受ける際は、前もってHPで歯科医師の所属学会や認定資格、経歴などを確認しておき、確かな技術力や知識を持った歯科医院で施術を受けましょう。
インプラント周囲炎の治療法
インプラント周囲炎の治療は、炎症の進行度に応じて方法が異なり、症状が比較的軽い段階では、歯肉を切開しない「非外科的治療」から始めます。
非外科的治療で改善が見られない場合や、歯槽骨の吸収が進んでいる場合には「外科的治療」へと移行します。
症状によっては「再生療法」で吸収された骨の回復を行うこともあります。
ここからは、それぞれの治療内容について詳しく解説します。
非外科的治療
非外科的治療は、歯肉を切開せず、専用器具で汚れ(プラーク、歯石)を除去することで炎症を抑える治療です。
以下のような処置を組み合わせながら進めていきます。
プラーク・歯石除去
まずは、インプラント周囲や歯周ポケットに蓄積したプラークや歯石の除去です。
専用の器具や超音波スケーラーなどを用いて、自宅でのブラッシングでは落としきれない汚れを丁寧に取り除きます。
インプラント周囲粘膜炎の段階であれば、毎日のセルフケアの改善と歯科医院での清掃で改善するケースも多いです。
歯周ポケット内の洗浄
プラーク・歯石の除去と合わせて、歯周ポケット(インプラントと歯肉のすき間)内を薬剤で洗浄する処置を行います。
また、口腔内全体の菌を減らすため、殺菌作用のある薬剤でうがいをします。
抗生物質の投与
炎症が広がっている場合や急性症状がある場合は、歯周ポケットに直接抗生物質を注入したり、抗生物質の内服が必要になることもあります。
炎症を抑制し、感染拡大を防ぐことが目的です。
被せ物(上部構造)の調整
インプラントの噛み合わせのバランスが崩れていると、特定の部分に過剰な力がかかり続けたり、磨きにくい部分が生じたりして、インプラント周囲炎が悪化する原因になります。
必要に応じて被せ物(上部構造)の形や高さを調整します。
うがい薬の処方
口腔内を清潔に保つため、殺菌成分を含むうがい薬が処方されることがあります。
通常の歯磨きと組み合わせてうがい薬を使うことで、より効果的なケアができるでしょう。
歯磨き指導・生活指導
インプラント周囲炎の治療は、歯科医院での処置だけではなく、自宅でのケアも重要です。
毎日のセルフケアが不十分なままでは、治療後に再び細菌が増殖してしまいます。
そのため、歯科医師や歯科衛生士から正しいブラッシング方法や歯間ブラシ、デンタルフロスの使い方を丁寧に指導します。
また、喫煙や食生活など、インプラント周囲炎のリスクを高める生活習慣についての指導も合わせて行われることがあります。
外科的治療
非外科的治療を行っても炎症が改善しない場合や、歯槽骨の吸収がある程度進んだ重度のインプラント周囲炎の場合には、外科的治療を行います。
歯肉を切開してインプラント体を露出させ、表面に付着した細菌や汚染物質を専用器具・薬剤を使って洗浄・消毒します。
このほか、一度インプラントを撤去して再埋入するケースもあります。
必要に応じて、インプラントを削ってツルツルにし、汚れの再付着を防ぐ処置(インプラントプラスティ)を行うこともあります。
再生療法
再生療法は、インプラント周囲炎によって失われた組織の回復を目的とする治療法です。
インプラント周囲の外科的な清掃後、自家骨や人工骨を移植して骨量を補い、メンブレン(人工膜)を置いて骨の再生を促します。
失った歯肉の組織を補うために、歯肉移植(遊離歯肉移植)が行われるケースもあります。
インプラント周囲炎を予防する対策
インプラント周囲炎は、一度発症すると治療が難しく、症状が進行するほど身体への負担も費用の負担も大きくなってしまいます。
そのため、発症させないための予防が非常に重要です。
ここからは、日常生活の中で実践できる予防対策について詳しく解説します。
セルフケアを丁寧に行う
インプラント周囲炎の主な原因はプラークの蓄積であるため、毎日のセルフケアを丁寧に行うことが基本的かつ重要な予防策です。
インプラントは歯と歯肉の境目に汚れが溜まりやすい傾向にあります。
毛先が細めの歯ブラシを選び、毛先を歯と歯肉の境目に45度の角度で当てて小刻みに磨きましょう。
歯ブラシだけでは取り除けない歯と歯の間の汚れには、歯間ブラシやデンタルフロスを併用すると効果的です。
なお、研磨剤入りの歯磨き粉はインプラントの被せ物や周囲の歯肉を傷つける可能性があるため、使用する歯磨き粉の成分にも注意しましょう。
自己流のブラッシングでは磨き残しが生じることもあるため、一度歯科医院でのブラッシング指導を受けてみるのもおすすめです。
歯科医院での定期的なメインテナンスを欠かさない
どれほど丁寧にセルフケアを行っていても、自分では落としきれない汚れや歯石が溜まることがあります。
そのため、インプラントを長持ちさせるためには、歯科医院での定期的なメインテナンスが不可欠です。
メインテナンスの頻度は口腔内の状態によって異なりますが、一般的には3〜6か月に1回程度が目安です。
禁煙・減煙する
インプラントを長持ちさせるために、禁煙は有効な対策の一つです。
喫煙はインプラント周囲炎のリスクを高めるため、インプラント治療をきっかけに禁煙を検討してみましょう。
喫煙しているとインプラント保証の対象外になることもあるため、担当の歯科医師と相談しつつ、禁煙外来の利用を検討してみてもいいかもしれません。
まとめ
インプラント周囲炎は自然には治癒せず、放置すると顎の骨が溶け出し、最終的にはインプラントの脱落を招くこともあります。
しかし、早期に気づいて適切な治療を受ければ、症状を改善できる可能性があります。
自覚症状がなく見逃してしまいがちなため、セルフケアに加えて定期メインテナンスをしっかり受けて、予防に努めることが大切です。
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